デビューから一年経ち、今思うこと
昔から、肝心なところが不器用な人間でした。
器用にできたと思うも束の間、盛大に過ちを犯し取り戻せなくなってから悔やむ。
自分という存在の表現に悩んで、不遜と卑下を行ったり来たり。
そんな作業の繰り返しだったように思います。
プレイに関しても最初の頃はそうでした。
3割の期待と7割の不安を孕みながら待っていたであろうお相手に対して、気持を置き去りにしてしまったりどこか物足りなさを感じさせてしまった事もあると思います。
こちらを気遣って「楽しかったです」と言ってはくれるものの、どこか心許ない視線を感じ歯痒い思いで帰ることもありました。
技術が足りないのだと、夜通し枕に向かって鞭を振っていた夜もあります。
道具が足りないのだと、遥か海の向こうから取り寄せたことも少なくありません。
いちばんに大切なことは、多彩な技術でも強そうな武器でもないことは明白なはずなのに。
そんな僕ですが、素敵な人たちとの思い出を沢山経験することができました。
単なる暴行にも見えるような加虐の軌跡を、さも愛おしそうに見つめるお相手。
爽やかな仮面を被った、誰より楽しそうに暴力を扱う先輩。
おそらく普段は頑張り屋さんで、毎日を実直に過ごしているであろうお相手。
頭がよくて、否定も肯定もせず話を聞いてくれる先生みたいな先輩。
数分前まで散々虐げられていた相手と、日常会話を嗜む健気なお相手。
なんでも器用にこなせると思ったら、無邪気な一面も持ち合わせている無敵の後輩。
叩けば叩くほど、苦しめれば苦しめるほど没入していく底の知れないお相手。
いつも動いている、バイタリティの塊みたいなボスが2人。
そんな皆様方の姿を見て元気をもらうと共に、本当に本当に大切なことは「歩調」なのではないかと近頃はよく思います。
片一方の歩調が早すぎると、まるで置き去りにされているような感覚に陥ることでしょう。
ただ控えられたらそれはそれで、どうもスッキリしないものです。
SMという瞬間的な相互コミュニケーションにおいて、そういった思いを抱える方も少なくないようです。
歩調を合わすことができたなら、もう苦手プレイだろうがなんだろうが、どこまでだって行けることもあるかと思います。
ただ、歩調を合わすことが叶わなければ、大好きなプレイをしたところで楽しくなんかないことでしょう。
まずは、隣を歩くことから始めたいなと思います。
時にペースを早めたり、立ち止まってみたりすることもあるでしょう。
息つく暇もなく全力疾走する日もあれば、お互いを確かめるようにゆっくり歩くこともあると思います。
そうして楽しい時間を共有することができたなら、僕はやっぱり幸せ者です。
ここまで御拝読ありがとうございました。
日頃からお世話になっております関係者様方、ここまでお相手して頂いた全ての方に厚くお礼申し上げます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
亜希